1.にゅうもんするまえに−トキノハはなに焼?−

1.にゅうもんするまえに−トキノハはなに焼?−

【トキノハにゅうもんって?】

 

 

コラム「トキノハにゅうもん」では、

トキノハのスタッフ大川が

トキノハという京都・清水焼のお店で陶芸の仕事をする中で、

日々生まれる疑問や発見、そして学びをお話ししていく場です。

 

写真を見て気になっているけれど•••や、行ってみたいけれど•••と、

トキノハのショップ入門したい方には、お店で実際に器選びがしたくなるように、

お店にお越し下さった方には、自分にとっての一皿を見つけてもらえるように、

そして、愛用してくださっている方には、改めて、愛着をもっていただけるように、

トキノハのお店と器のことを紹介できればとも思っています。 

 

話数:入門編 全10回

 

陶芸のこと、器のこと、そしてトキノハのことを、

はじめの一歩として、トキノハにゅうもんをきっかけに知ってもらえれば幸いです。

 

入門編の約半年間、どうぞよろしくお願いいたします。

 

では、さっそく入門編①に参りましょう!

 

 

【入門編①トキノハはなに焼?】

 

トキノハは京都市山科区の清水(きよみず)焼団地にお店を構える器やさんです。

具体的にショップ兼工房であるトキノハという場所は、

成形から焼成、そして販売とすべてのことを行っているところです。

初めてオンラインページで、お店で、トキノハの器を見たときに、

モダンなスタイル、かわいらしいフォルム、

古風な表情というような多くの種類の器を目にして、

戸惑われたかもしれません。

初めて来店されるお客様には、

絵付けなどの装飾があまり施されていないこと、

陶芸としてイメージされるようなどっしりとした重量感がないこと、

それとは正反対の、とてもシンプル、だけど種類の豊富さ、から

 

「何焼ですか?」

 

と尋ねられます。

答えはシンプル、「京焼であり、清水(きよみず)焼」です。

 

○○焼というワード、その土地で作られたもの、ということを意味します。

 

京都という土地で作られる焼き物はすべて京焼。

(ただし、茶陶の楽焼は例外です)

そして、その中でも清水寺という名称があるように、現在、清水焼と呼ばれているものは、

清水寺につながる五条坂を中心とした京都市の東の地域周辺で発展・展開してきたものを示すことが多いです。

清水焼団地という地域はその一つです。

つまり、清水焼は京焼の一つ。

そのため、トキノハの焼き物は京焼・清水焼ということになります。

 

「どういう特徴があれば京焼・清水焼ですか?」

 

という疑問も一緒にいただいています。

 

解答例:おそらく他にもある多くの京焼・清水焼のお店でも、

    「特徴がないこと」や「なんでもある」ということが

    京焼・清水焼であるというように言われているのではないかと思います。

 

特徴がないってどういうこと?って思いませんか?

私は昔、このことを聞いたとき、よく理解できませんでした。

 

そこで調べてみると、どうやら京焼誕生の流れが理由なようです。

京焼は、江戸初期頃に誕生したと言われていて、そう古くはない焼き物です。

江戸時代の少し前、千利休がいた茶の湯文化最盛期、

全国各地では焼き物は数多く作られ、それらはやはり京都に多く流入してきました。

さまざまな土や釉薬、装飾や技法と出会うことができた京都は、各々焼き物を作り始めました。

ということなのです。

 

例えば、当時、京焼の発展に貢献した人物を見てみると、

野々村仁清とその弟子尾形乾山でも、作風が全く異なります。

仁清は絵画的であり、また具象的な作風に対し、

乾山は抽象的であり、デザイン的な作風です。

もしかすると、両者とも絵付けをしている点において共通していると思われるかもしれません。

しかし、仁清も乾山も(両者とも弟子はいたのですが)、

同じ作風のものを作り続けていたわけではなく、

常に新たなものづくりを行っていました。

 

  

また、他の産地、有田焼とくらべてみます。

簡単に有田焼の流れをお話しすると、

日本で初めて磁器を製造した有田焼は、朝鮮半島から陶工を連れてきました。

やがて、有田の生産技術力が上がっていき、海外(主にヨーロッパ)へ輸出するようになります。

この時に、中国や東洋のイメージをもつものが良いとされ、

緻密な絵付けのある焼き物が多く生産されました。

それが今日、特徴をイメージしやすい有田焼です。

 

全国各地から流入し、すべてを享受して独自に発展させている京焼と、

自ら輸入し、そして海外へ輸出するために発展させてきた有田焼、

この二つの焼き物の様式が、まったく正反対の発展の仕方をしていると考えると、おもしろいなと思います。

 

京焼に特徴がないということは、まだ京焼が出会えていない○○焼が巡ってきたときには、

そこからまた新しい京焼が生まれる可能性があるということです。

それは日本国内だけではなく、世界各国の焼き物かもしれません。

もしかすると、陶芸という分野以外のなにかからかもしれません。

 

新しい京焼、すごく楽しみです。

 

京焼らしくないと言われる、シンプルでモダンなトキノハの器は、

らしくないと思われている時点で、すでに京焼らしい焼き物のように思えてきます。

私がトキノハの器を初めて見たときは、イギリスの陶芸家ルーシー・リーの作品と共通点があるように感じました。

けれど、それだけではなく、どこかまだ引っかかっているところがあります。

 

京焼・清水焼のトキノハらしさ、特徴について見つけることができたもの・ことを、

入門編②以降でお話できればと思います。

 

 

以上、「トキノハ入門、するまえに、と入門編①トキノハはなに焼?」でした。

 

次回は「トキノハ、入門しました、と入門編②」です。

実際に、トキノハ の器を見ていきたいと思います。

 

これからどうぞよろしくお願いします!

  

 

文・大川理可

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