2.トキノハのシリーズ−焼きかたから−
みなさん、こんにちは。
スタッフの大川です。
前回はトキノハは何焼なんだろう?ということから、京焼・清水焼についてお話させていただきました。
無事に入門をすませたところで、今回はそんな京焼・清水焼であるトキノハが作っている器を見ていこうと思います。
多種多様なトキノハのうつわとシリーズですが、私から見たトキノハのうつわの印象と、一方でつくり手目線も踏まえつつ、紹介させていただきたいと思います。
【トキノハのシリーズ】
トキノハの器商品は、いくつかのシリーズと、そのシリーズごとに様々なかたちの器を作っています。
現在、トキノハのお店の器商品のシリーズの中で、レギュラーラインとしてあるものは、
shiro-kuro、calm、copper、ash、tetraとblack&tetra、three-tone、iroe、KAKELです。
それぞれの特徴を簡単にまとめてみました。
shiro-kuro:白と黒の色味を掛け合わせたトキノハの定番のシリーズ
calm:穏やか、静寂、と紹介がありますが、この穏やかなの単語の意味には海や空の穏やかさを含む、海の深さや透明感、空の青さや明るさというものの穏やかさ2色の青さで表しているシリーズ
copper:金属の銅を指し、銅を調合した釉薬のシリーズ
ash:灰を意味し、灰を用いて調合した釉薬のシリーズ、
tetra:以前、カフェをされていた方からの依頼によって生まれたシリーズで、black&tetraはそこからさらに成長したシリーズ、
three-tone:見た目の通り、トキノハのイメージカラーでもある白・黒・青の3色を一色ずつ丁寧に色分けているシリーズ
iroe:漢字で「色絵」と書き、粉引の器に上絵付けという技法で赤や黒、そして銀彩を用いたシリーズ
KAKEL:上はトキノハの陶器、下は喜木家具工房さんの木を組み合わせたコラボレーションの器
ところで、もし、これらのシリーズをグループ分けするときに、皆さんならどのように分けますか?
色ごと、かたち、なんとなくの好きな雰囲気と、さまざまに分けることができると思います。
私は次のようにグループ分けをしてみました。
- ①shiro-kuro、calm、tetraとblack&tetra、three-tone、KAKEL
- ②copper、ash
- ③iroe
これらをどのように分けているかというと、窯の焼き方です。
- ①酸化焼成(窯の中に酸素を送って焼く)
- ②還元焼成(窯の中の酸素をなくして焼く)
- ③上絵(一度焼き上げた器の上に、絵を描いてからもう一度焼く)
という陶芸の中ではオーソドックスな窯の焼き方です。
焼き方についてあまり専門的な話をすると、入門編ではなくなってしまうので、
そういうものがあるのか、とかっこの中の内容を思う程度で十分です。
ただ、今回は窯で焼くことを含めて、陶芸における器づくりの工程について簡単にお話しすることで、いずれ焼き方のお話をする際にイメージし易くなればと思います。
【焼きもののうつわ作りの進め方】
陶芸における器づくりの進め方は、「土で形を作って、窯で焼く」という単純なものです。
しかし、あらためて考えてみると、どうやって順を追ってできあがっていくものなのでしょうか。
すこし細かく、しかしざっくりというと、
- ①つくる
- ②乾燥させる
- ③焼く
- ④釉薬をかける
- ⑤焼く
という工程で、5分の2、焼きます。
意外と知られていないかもしれませんが、陶芸の制作工程で2回焼成することは、現在、一般的な工程で、
「素焼き」・「本焼き」というそれぞれちゃんとした焼成方法の名称があります。
【焼くことの役割その①】
「本焼き」での「焼く」が、おそらく多くの方がイメージする「陶芸で焼く」ことだと思います。
私がシリーズを窯の焼き方で分けた、酸化焼成・還元焼成の方法が、この段階の「焼く」です。
土でかたち作った器に色を付けたり、絵を描いたりしたものを、焼くことで「完成した」の多くが、ここにあてはまるのではないでしょうか。
物質的な陶芸における器の完成というのは、料理を盛り付けたり、花を生けたり出来る「状態」にするということです。
考えてみると、土は土のままでは、水にぬれると溶けてしまいます。
土の状態のままの器だと、水も飲めなければ、お花も生けることができません。
実は、この「焼く」ことをすることで、土を土じゃない物質に変化させていました。
このことが、実は土器の原点です。
【焼くことの役割その②】
また、器に色を付けるために、古くから釉薬(ゆうやく)と呼ばれるものを使います。
(透明なものや青や緑と色みのあるもの、つやっとガラス質なものやしっとりとしたマット調なものなど種類はさまざま)
釉薬の場合、「掛ける」と言い、バシャッと掛けたり絵の具のように筆塗りをするというよりは、バケツの中で液体状になった釉薬の中に、器を全体をちゃぷんと2~3秒前後浸ける方法が広く一般的です。
そうして、器全体に均一な濃さの釉薬が掛かるようにします。
この時に、土の状態のままだと、溶けたり壊れたりしてしまいます。
つまり、色をつけて焼くための「本焼き」の前に、一度「焼く」ことをしておかなければいけません。
それが「素焼き」という「焼く」ことであり、土を水に溶けない物質に変えるための「焼く」を行なっているわけです。
というわけで、2回焼くことには理由がありました。
【焼くことの役割③】
ちなみに素焼きと本焼きでは焼く温度も違います。
おおよそ、素焼き:700〜900度前後、
本焼き:1230〜1250度前後で、
素焼き:土を解けないものにする、
本焼き:釉薬を溶かすという目的のための温度です。
ちなみに、この温度は一瞬では上がりません。
もしくは、この熱い温度の窯の中にポイっと土を放り込むこともできません。
弾け飛ぶか爆発します。
窯元にもよりますが、1時間に100度上昇を目安に焼いていくので、1230〜1250度まで上げるためには早くても12時間ほど掛かります。
そして、窯の温度が下がっていく方にも時間がかかります。
熱いお茶に氷を入れると割れるように、器も最高温度まで焼きあがってからといって、すぐに窯から出して急激に冷ますと割れることがあります。
もちろん窯にもよくありません。
トキノハの場合、器を焼き始めて窯から出てくるまでに素焼きは2~3日、本焼きは3~5日かかるので、焼くだけでも一週間ほど掛かります。
ちなみに、iroeシリーズの上絵焼成は、本焼成の後、さらにもう一度焼くため、3回焼成することになるわけです。
陶芸のうつわ作りの工程の5分の2が今回お話した焼成となると、残りの5分の3のかたちを作る工程と時間も、なにか色々とありそうです。
入門編③以降では、実際にどのようにトキノハ の器がかたち作られていくのかを、shiro-kuroシリーズを見ながらお話していければと思います。
以上、「トキノハ のシリーズと入門編②」でした。
次回「入門編③」もどうぞよろしくお願いします!
追記で画像掲載します。よろしくお願いします。
文・大川理可