4.トキノハの手しごと① −線彫り−

4.トキノハの手しごと① −線彫り−

こんにちは、大川です。 

前回の入門編③では、まず、最初の一歩として、寸皿と寸鉢のお話をしました。

今回から、手しごと編として、

寸皿と寸鉢をもとに、他のshiro-kuroシリーズの器と共通のある、

かたちやいろなど、ひとつひとつのアイテムやポイントで、「なぜか心にひっかかる」を見つけながらお話ししたいと思います。

そして、その中にある、トキノハらしさも探っていきましょう。

 

 

【線彫りのあるうつわ】

 

寸皿、寸鉢にはリムと呼ばれる、段差のある縁の部分がありますが、

そこには、「線彫り」の施しがなされています。

線彫りの装飾は、shiro-kuroシリーズの、全ての器ではありませんが、特徴のひとつです。

 

線彫りのある器は、

  • 寸皿、寸鉢
  • 蕎麦猪口カップ、コーヒーカップ、マグカップ、フリーカップ、細湯呑み
  • 飯碗 平・丸

もちろん、今後増える可能性もあります。

 

そして、線彫りの施されている部分は、

  • 寸皿と寸鉢は、リムの部分
  • その他のうつわは全体です。

 

  

【お買いもの目線】

 

お店で器を見ていただいているとき、「実は線彫りしているんですよ」と、ご案内をさせていただいています。

 

黒い器は、釉薬がさらっとしたものなので、浅い線でも埋もれることはほとんどなく、
本焼成後もシャープに現れています。

対照的に、白い器は、釉薬が少しとろっとした雰囲気で、さらに乳濁がかっているので、線は柔らかい表情になっています。

そして縁白の器は、口元にかけた白い釉薬は線彫り上を伝い、黒いエリアに流れた景色になっています。

 

この線、好みが分かれます。

 

ハッキリ線とした線の中に流れる釉薬を好む方、

そしてその立体感を楽しむ方もいれば、

女性的な線の細く、柔らかな表情のもの、

かつ、対照的に、シャープな印象の仕上がりが好みの方もいます。

 

そのため、線について確かなことを言えるとすれば、

くっきりと見える、や、ちょっと寄り道をしている、

やわらかくささやかな、や、みっちりと規則正しい、と様々な線がある中で、

良い線彫り・悪い線彫りはありません。

 

線彫りが見えることは、器のアクセントの一つではあります。

けれど一方、線彫りが表立って見えていなくても、生地のベースとしてあるため、白色の色味の変化に影響しています。

shiro-kuroシリーズの線彫りのないシリーズと比べた時に、気づくことができました。

もし、線が寄り道していても、そこが良い景色や雰囲気をもたらしてくれていることがあります。

  

 

 

 

【作りて視点】

 

さて、そんな線彫り、厳密に線の入れ方に決まりがあるわけではありません。

まっすぐに引いてやるぞという熱意、幅、良い仕上がりになりますようにという念はあります。

 

職人によって線の入れ方も異なります。

  • 縦向きに器を持ってまっすぐ線を下ろす↓
  • 横向きに器を持って線を引く→
  • 口もとから高台に向かう
  • 逆さまに向けて、高台から口に向かう

 

現在、トキノハの工房うらでは、これらを組み合わせた三パターンで作られています。

私は口もと縦(左回り)派です。

 

  

また、線を引く道具は鉄筆といい、先が細く尖っている鉄の棒を使っています。

この道具も何本かあり、数コンマミリの差で、ペン先のとがり具合が異なります。

 

なぜ、種類があるのかと言えば、線を引くときの土のかたさの合わせるためです。

 

そもそも、線彫りをするタイミングは、かたちの成形後、土を完全に乾燥させる前です。

この、半乾きのタイミングも、まだ、乾き始めたばかりで柔らかい時から、もうすぐ乾いてしまう少し硬い時と、土のかたさの差が大きいです。

そのため、かたさに合わせた鉄筆を選び方は、柔らかい時は先がまるめ、乾いていたら鋭利、という具合になります。

 

これだけでも線の種類は無限にあるような気がしてきます。

 

「ただ線を引く。」

 

 

言葉に表してみると、とてもシンプルです。

 

ですが、いろいろな要素が組み合わされて、人の手によって引かれる線は、全く同じものがありません。

 

私の場合、細かくし過ぎなくていいよと言われるのですが、コレ、ちょっと油断すると広くし過ぎてしまいます。線の幅のたった1mmの差は、100mスプリント走の0.1秒のように大きいです。

それなので、線を引く時は、まずは商品の見本を手に取って、線をじっくりと見てから作業を始めています。

「トキノハの器」らしい線の間隔も、大切にしているトキノハの「手づくり」な部分を作り上げている一つだからです。

 

トキノハらしさを「線」からしっかりと器に落とし込みます。

手づくりで出来上がるものの良さというのは、きっとそういうところではないでしょうか。

上手なだけでも綺麗なだけでも、じゃなくて、

ていねいさ、や、どこか味のある、というもの。

 

うつくしい「線」は、きっとその「トキノハらしさ」が詰まっているかということのように思います。

 

 

 

以上、【入門編4トキノハの手しごと①】でした。

 

 

次回、入門編⑤もよろしくお願いします。

ありがとうございました!

 

文・図 大川理可

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