7.はっ水剤の基礎編 ―窯詰めのために―
こんにちは、大川です。
今回のトキノハにゅうもんでは、陶芸界の影の存在「撥水剤(はっすいざい)」を取り上げてみます!
はっ水剤ってなんだろう、というところですが、漢字のまま解釈すると、「水をはじく」ものです。
私にとってはよく使用してきたものなので、今回のお話をするために、改めて焼きもの作りの本に目を通してみると、詳しく載っていませんでした。
簡単に言ってしまうと、液体状の防水ワックスです。
ということで、フォロー的存在である撥水剤をクローズアップしてみようと思います。
その使いかたと役目、工程と共にみてみましょう。
【使いかた:高台に塗る】
もっとも一般的な使用例としては、
- 器成形→素焼き→撥水剤→施釉
の工程で使用されることが多いです。
素焼きをした器の素地の「高台(こうだい)」にはっ水剤を塗ります。
高台は器にとって足に当たる部分で、
その足の裏、地面と接する部分を「畳つき(たたみつき)」と呼ぶことがあります。
その畳つきとその少し回りの所にはっ水剤を塗ります。
そして施釉をすると、その部分の釉薬を弾いてくれ、
施釉した器を机に置いたとき、釉薬で机を汚しません。
とても便利な道具です。
ちなみに、私調べによると、はっ水剤の液体は青色か赤色のものが多いです。
【役目:窯詰めのため】
作ったうつわを窯で器を焼くとき、数多くの器を一度に焼きますが、
どのようにして窯の中に詰めているかというと、
板にうつわを並べ入れたものに柱を立てて、棚のように何段か柱を立てて組みます。
板の上に器を並べ、敷きつまると支柱を置いて、またその上に板を乗せます。
そして、また器を並べて支柱を置き、板を乗せる、を繰り返します。
このようにしていわゆる窯づめを行いますが、
器の足の裏の部分にあたる箇所「たたみつき」の釉薬は剥がしておくか、
もし釉薬を載せたままの場合、直接つかないように浮かせるか
をしなければなりません。
以前書きましたが、釉薬は溶けてガラスに変化するものです。
もし、ここに釉薬が付いたまま焼成してしまうと、溶けた釉薬がガラス状になって冷え固まるときに、板とくっついて取れなくなってしまいます。
ちなみに、釉薬が焼成中にガラス状に変化するということは、液体になっています。
そのため、重力に従って少し流れるので、はっ水剤を塗る範囲は、裏面だけではなく、側面の1~3ミリ程度塗っています。
この側面の1~3ミリの部分は、高台のフォルムと関係があります。
そもそも高台のフォルムは、直角に床にべた付け90度ではなく、
45度のななめカットされているものが多いです。
その理由の一つは、床との接地面が広くなるといろいろと都合が悪いのですが、
その色々の一つをあげると、陶器で机や台などを傷つけないように、その接地面を小さくするためです。
もう一つあえて挙げると、はっ水剤を塗った位置を見えにくくして、器に掛けられた釉薬をきれいに見せる効果もあります。
高台にはっ水剤を塗ることは、実際にしなくても良く、
釉薬を削り落としたり、直接つかないように「め」を付けて浮かす方法もあります。
しかし、はっ水剤はとても便利で効率的です!
釉薬の節約にもなることがあります。
そして、それ以外にも使いかたがあります!
それは、はっ水剤の特徴を生かして作られている器がありますが、それは一体どのうつわでしょうか。
続きは「はっ水剤の応用編」でお話ししたいと思います。
よろしくお願いします!
文・図 大川理可